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「昨日もドーナツ食っただけだろ。何か腹に入れておけ」
達哉は体を何とか起こして椅子の背にもたれた。
「頭が痛い」
ソマーズはうなずいた。そりゃそうだろう。昨日は殴られた挙げ句、薬品まで使われたんだから。
「鎮痛剤もある。でもこれは飯を食ってからだ」
「いらない」
「今日も長くなりそうだぞ」
「なんで」達哉は眉間にしわを寄せた。「二十八件終わった」
「一回ぐらいじゃ覚えられないだろうって話だ。三クールの予定を組んである」
「冗談だろ?」
「スケジュール表を見せてやろうか?」
達哉はじっとソマーズを見た。それから小さく首を振る。「うそだろ?」
ソマーズは黙っていた。何が彼をそんなに嫌がらせるのかわからない。確かに影を勝手に返すと言われたのは迷惑な話だろうが、どうせ逃れられないのなら話を聞くだけ聞けばいいだけのことだ。聞きたくないと耳を塞ぐような子どもじみた抵抗を見せなくてもいいようなものだが。
「三回聞いたところで覚えるわけないだろうが。一気に二十八件も」
「わかってる。だから再来週にまた授業を開く」
達哉が言葉を失い、目を閉じた。そして開いて天井を睨む。
「目的は何なんだ。俺に何をさせたい?」
「さぁ。末端には命令の意味なんて知らされないもんだ。おまえだってそうだったろう? 本物の『エル・ニーニョ』時代は」
ソマーズは自分の分の紙コップのコーヒーを飲んだ。そして時計を見た。「あと十分で二クール目の授業が始まる。しゃきっとしろ」
「嫌がらせだろ。俺が前に勝手にセグールに行ったから」
「知らない」ソマーズはため息をついた。「本当に知らないんだ。俺の役割は、おまえの頭を起こしてちゃんと授業を受けられるようにすることだ」
「起きてる」達哉はソマーズを見た。
「そりゃ、良かった」
「一つだけ聞かせてくれ」
「何だ」ソマーズは達哉がじっと見返してくる視線に負けないように彼を見た。
「二〇〇〇年の司祭の狙撃はまずい選択じゃなかったか?」
ソマーズは首を振った。
「俺は詳細を知らないし、作戦についても知らない。まずい選択だったかどうかは、ソンブラ計画の中枢でのみ議論されることで、おまえが考えることじゃない。第一、もう終わったことだ」
達哉はうなずいた。「そうだな」
ノックがあり、ちょっと早めに最初の担当官がやってきた。
「クソ食らえ」と達哉が担当官とファイルにコーヒーをぶちまけ、ソマーズはまた彼を拘束しなければならなかった。
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