引退試合

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引退試合

私は馬鹿だ。 物を知らない。勉強が嫌い。愚直で非効率。 私は駄目な奴だ。 可愛くない。 ファッションにも疎い。 ガサツで、おとこっけがなく、バスケ以外はなんにもやってこなかった。 私は本当に救いがない。 鋭く脈打つ左足首が私をベンチに結わい付ける。 これで中学最後の大会なのに、私は試合に出れず仕舞い。 ベンチの端から、地団駄も踏めない足を抱えてコート内を見守っている。 こんな私に出来ることは数少ない。 だからこそ、私は精一杯声を張り上げる。 今の私に唯一出来ることをこの声に乗せ。 届け、届けと願いながら。 絢香の背中目掛けて応援を飛ばす。
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