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試合後
「いやー、ぼろ負けだったねぇ」
絢香の声色は清々しくて、口元は軽く緩んでいた。
「最後なんかひどかったもんね。絢香、バテバテだったじゃん」
「なにをー。真智だって結局私に一回しかパス通してないじゃん」
「一回でも通してあげたんだから感謝してもらわないと」
結局あの後、私達はあっさり負けた。
最後の瞬間があれほどあっけないと感傷に浸る暇もない。
次のタイムスケジュールが有るからと、私達はコートから追い出されあれよあれよと言う間に引退した。
「最後の円陣、みんな泣いてたねぇー」
「絢香泣きすぎてなに言ってるかわかんなかったよ」
「真智だって人のとこ言えないじゃん」
お互いブサイクに腫れ上がった目元をからかいあいながら帰路につく。
体育館を出ると雨は止んでいた。
天に手のひらをかざし、絢香がぶー垂れた。
「もー、今止んでも仕方ないじゃん。ね?真智」
「いいじゃん、これはこれで」
「なんでさ?」
絢香に見えるよう、私は空を指差した。
多分、今日の空は私たちの代わりに存分に泣いてくれてたんだろう。だから今、私達はこうやって笑えてるんだよ、きっと。
「ほら、絢香空見てみ。晴れ晴れしててこれ以上ないほど引退日和じゃん」
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