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初めての出会い
絢香との出会いは小学四年生の夏休み明け。
富山からやってきた背の高い女の子は、教壇に立つや否や自己紹介もせずに泣き出した。
後に聞いたところ、はじめての転校で緊張して軽くパニックになったらしい。
「た、たかや、たかやまあやかですぅ。よろ、く、おねがい、します」
しゃくり上げながらひねり出された少女の言葉は、休み時間のたびにクラス中で繰り返された。
お調子者の男子が顔をひしゃげながら真似をすると、取り巻きが手を叩いて騒ぐ。
そんな下らない光景を見ていて私はずっと腹を立てていた。
バカな男子にも、悪ノリを咎めない女子にも、その笑い声に触れる度に背中を丸め俯く転校生にも。
とうとう我慢できなくなった私が起こした行動は、私らしい馬鹿なやり方だった。
片っ端から男子を殴り、女子を集めて罵倒した後、自分の席で呆然としている転校生の肩を思いっきり掴んで叫んでやった。
アンタもアンタだ!せっかく大きく生まれたんだから胸を張れ!と。
丸めてる背中を伸ばそうと、力一杯絢香を机からひっぺがしたことは覚えている。
「あの日の真智ちゃんの手のぬくもりは、私一生忘れない」
絢香は何かにつけてこの日の出来事を嬉しそうに話す。
ニコニコしながら私を見つめる絢香にはあの頃の怯えた面影は残っていない。
ともかく、私と絢香はそこからよく遊ぶようになる。
兄貴のバスケットボールを借り、公園に行って毎日日が暮れるまで過ごした。
四年生にもなって一緒に外遊びをしてくれる女子は絢香以外にいなくて、私達は四六時中2人っきりで遊んでいた。
それから数年。
場所は変わって年を重ねても、私はずっと絢香と遊んでいる。
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