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次の日の練習、それは起こった。
普段なら絶対しない危険なプレー。
私は絢香が構えるゴール下めがけて真正面から無策で突っ込んだ。
空中で私と絢香がぶつかる。よろけて空中で体制を崩す私を周りは息を飲んで見守っていた。
やっぱりだめか、と思いながら私は地面に落ちていった。初めから敵うとは思っていない。当たり前だ、20センチある身長の差はそう簡単には覆らない。
でも、ここで想定外のことが一つ起きた。
私が地面に落ちた瞬間、左足からぷつりと千切れる音が体内に鳴り響いたのだ。
それはアキレス腱が切れる音だった。
痛みで声にもならない唸り声を上げる私に「ごめん、ごめんね真智ちゃん」と涙を滲ませ何度も謝る絢香。涙を拭う絢香の手は突き指とマメでぼろぼろで、彼女が重ねてきた日々の努力を物語っていた。
コートの端によけて保険の先生を待つ間、雨で冷えた体育館の天井めがけて絢香の白い息が幾度となく登っていった。
温もりを奪われた絢香の顔は酷く青白く、どっちが怪我人かわからないぐらい。
そんな血が引いた人間の顔を真近で見るのは初めてだ。
絢香にそんな顔をさせたのは誰?
他でもない、私だった。
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