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サボりの代償
「…ったく。なんで俺が資料の返却なんかしなきゃなんないんだよ…。」
ブツブツ文句を言いながら城の図書室に向かって歩く1人の騎士の青年。
手には分厚い資料の束を抱えている。
「ジーンに見つかりさえしなければ、今頃はマリーちゃんとアンナコトやコンナコトを…。」
恨めしそうに呟きながら青年はため息をつくと、ふと窓の外を眺めた。
自身の瞳の色と同じような快晴の空に目を細める。庭園では庭師が少し暑そうにしながらもせっせと作業をしていた。
庭園から視線を移すと、先ほど休憩を共にしないかと誘いそびれたメイドのマリーが他のメイドと何やら話しているのが見え、青年は再び盛大なため息をつくのだった。
「何ぼんやり外なんか眺めてるんだ、アロン。手に持ってるそれはさっき返却を頼んだ資料だろう?まだ返しに行って無かったのか…。」
窓の外をぼけーっと眺めていた騎士の青年、ー…アロン…ーに、呆れたといった口調で話しかけたのはアッシュグレーの髪の長身の青年。格好を見るに彼も騎士のようだ。
「!ジーン…。図書室の場所がわからなくて時間くったんだよ。俺、んなとこ普段行かねーし。」
アロンと呼ばれた青年、アロンダイトは窓の外を眺めていた顔をアッシュグレーの髪の青年の方に向ける。道草がバレてしまいその表情は少しバツが悪そうだ。
アッシュグレーの髪をサラりと揺らしながらアロンダイトの方へ向かって来るもう1人の騎士が、さっきアロンの愚痴に出てきた人物、ジーンことユージーンである。
「場所がわからないなら聞けば良いだろう。ったく、今度は資料の返却を理由に仕事をサボる気じゃないだろうな…。」
「はぁ!?そんなん言うならお前が返しに行けば良かっただろ!?」
少し道草をくってはいたが、資料の返却を長引かせて仕事をサボる気など無かったアロンダイトは心外だとユージーンにくってかかる。
しかし、ユージーンにああ言われても仕方ないほどにアロンダイトにはサボりの前科が山ほどあった。…というか、今彼が頼まれている資料の返却自体が、実はサボりの罰なのである。
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