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「……はは、なんだ、そういうこと」
「……ぅ、え?」
咎められることもなかったのでそのまま東堂の胸に体を預けていた日暮は、どこか自嘲気味な笑みを浮かべる東堂をぼんやりと見上げた。
「もう、調子が狂うなぁ。今日は無理矢理にでもするつもりだったんだけど」
自分の髪をかきあげた後、汗で張り付く日暮の髪を額から退けて言葉を続ける。
「教えてあげるから、もう一回咥えてごらん」
近い距離で綺麗な瞳に見つめられ、まるで吸い込まれるようにその言葉に従った。
無理やり頭を押さえつけられた数分前と違って、今度は優しく髪をかき混ぜられる。
「ん、ふっ」
「自分がされて気持ちいいところ、わかるでしょ?」
四つん這いになった体の上を、東堂の長い指がなぞる。
それがまだ傷がふさがって日が浅い箇所をかすめると、じくりと胸が締め付けられるような感覚に陥る。
しかし、東堂の言葉通りに意識を集中すると、次第にその痛みは熱となって体の中心に集まった。
「なに、自分で弄ってるの?」
無意識のうちに伸びていた手が、スウェットの中に入りかけて止まる。
「まぁいいか、今日は特別……こっちも気持ち良くできたら一緒にイっていいよ」
片方の手で再び優しく髪を撫でながら、もう片方は肌に爪を立てられる。
「ひっ、ぁ、ぁ……!」
鋭い痛みが快感に変わったその時、日暮は恍惚に身を震わせた。
それからいくら時間が経ったか、ひたすら初めて感じる絶頂に振り回された日暮は、いつまでも髪を撫で続ける東堂の姿を最後に意識を手放した。
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