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何でも屋『かがみ』は、その名の通りどんなことでも行う。
引越しの手伝いや家事代行、別れ話に必要な恋人のふりまで、数々の依頼を受けてきた。
そんな『かがみ』には裏の顔があった。
とはいっても仕事の内容は変わらない。何でも屋として依頼されたことを”何でも”こなすだけだ。
そう、それがたとえ法に触れることであっても。
「……任務完了しました」
闇の深い夜、賑わう繁華街から数十メートル離れた人気のない小道で日暮は背後に立つ富澤に任務完了の報告を行った。
手袋をはめた右手には小型の拳銃が握られている。
「おう、あの喧騒じゃコレに気づく奴は誰もいないだろう。今のうちに離れるぞ」
小汚い建物の壁に寄りかかっていた富澤は、血だまりの中心に倒れる肉塊を顎で示してタバコの煙を吐き出した。
「それにしてもお前物好きだよなぁ、すごい銃の腕前持ってることは知ってんだぞ?お前なら最小限の出血で抑えられそうなものなのに、わざわざ血祭りに上げるとは趣味の悪い」
からかうようにそう言う富澤の後を日暮は黙ってついて行った。
「今まで見たことなかったけど、実は社長から特別な訓練でも受けてたのか?まぁそうじゃなきゃ話がつかねぇけどな」
「……えぇ、そうですね」
『かがみ』の所有する白いバンに乗り込み、大口を開けて笑う富澤の運転で二人はその場を後にする。
日暮が社長による命令で東堂グループに派遣された後、教育係を終えた富澤は自らの発言の意味を深く理解することとなった。
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