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「……いつも思うが、お前よくそんな平気な顔してられるよな」
「はい?」
男所帯に少しでも花を、と実際に大きな造花を飾ってある自販機横。
空き缶用のゴミ箱の傍に、二人の男が立っていた。
「いやほら、顔色一つ変えないからさ」
喫煙禁止と手書きで書かれた年月を感じさせる黄ばんだ紙が、片方の留め具をなくして斜めに傾いている。
それを尻目にスパスパとタバコをくわえるのは、ここ何でも屋『かがみ』の幹部役員の一人である富澤だ。
富澤は、自分で吐いた煙を通気口に入る前にかき消そうと乱暴に腕を振りながら隣の男の顔を覗き込む。
「別にそんなつもりはないですけど」
「いや別に喜んでやってるとかそういうわけじゃなくてだな。ただ俺が初めての任務をもらった時なんかは……まともに立っていられないくらいだったから」
その初めての任務とやらを思い出しているのか、富澤の顔が一瞬曇った。
呟かれた言葉を気にした様子もなく、先日初めての任務を終えたもう一人の男——鏡日暮は空になったジュースの缶を静かにゴミ箱に落とした。
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