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何でも屋『かがみ』は、その名の通りどんなことでも行う。
引越しの手伝いや家事代行、別れ話に必要な恋人のふりまで、数々の依頼を受けてきた。そんな何でも屋に幹部なんて名前の役職が存在することは、よく考えれば違和感を抱く人が大抵だろう。
その幹部役員である富澤は、現在窮地に陥っていた。
「あの、社長。それは本当に俺に務まるお仕事で……?」
「……お前は何も考えずにただ頷いてればいいんだよ」
「は、はい!喜んでやらせていただきます!」
勢いよく頭を下げた先にいるのは『かがみ』の社長、鏡庵司だ。
サイドの髪を刈り上げ残りをオールバックにした髪型はそれだけでも威圧感がすごいというのに、つり上がった眉と瞳の見えないサングラスがさらに凶悪さに拍車をかけている。
そんな強面から発せられる、低く冷たい声に逆らえるわけがない。
富澤はギクシャクとした動きで『かがみ』が所有するビルの最上階にある社長室を後にした。
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