Ep.8

4/6
255人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「ぁ、があああぁ!」 「っ痛ってぇな!」  渾身の力を振り絞った。  重い頭を何とか持ち上げて、男のスネあたりに勢いよく噛み付いた。  しかし結果は、そんなもの何のダメージにもなっていないというように頭を殴られただけだった。  涙が出た。何の力もない自分が憎かった。  心臓を握り潰されるような圧迫感がどんな感情なのか、もはやわからない。  頭を殴られた衝撃と噛み締めた唇から流れる血で視界が霞む。  自分はこのまま死ぬのだろうか。  何もできないまま、惨めに床を舐め短い命を散らすのだろうか。  それから、どれくらい経ったのだろうか。短くも、長くも感じる。  遠くの方で倉庫のシャッターが開く音がした。  男たちは動かない肉塊に興味を無くしたのか、床に転がされたまま殴られることもなく、少年は生きていた。  もう目を開くことも億劫で、ただ口だけをだらしなく開けて涎と血液を垂れ流しながら、静かに生きていた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!