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「ぁ、があああぁ!」
「っ痛ってぇな!」
渾身の力を振り絞った。
重い頭を何とか持ち上げて、男のスネあたりに勢いよく噛み付いた。
しかし結果は、そんなもの何のダメージにもなっていないというように頭を殴られただけだった。
涙が出た。何の力もない自分が憎かった。
心臓を握り潰されるような圧迫感がどんな感情なのか、もはやわからない。
頭を殴られた衝撃と噛み締めた唇から流れる血で視界が霞む。
自分はこのまま死ぬのだろうか。
何もできないまま、惨めに床を舐め短い命を散らすのだろうか。
それから、どれくらい経ったのだろうか。短くも、長くも感じる。
遠くの方で倉庫のシャッターが開く音がした。
男たちは動かない肉塊に興味を無くしたのか、床に転がされたまま殴られることもなく、少年は生きていた。
もう目を開くことも億劫で、ただ口だけをだらしなく開けて涎と血液を垂れ流しながら、静かに生きていた。
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