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「え? 二人のことはそういう目で見てないよ」 「またまた~!」  愛実が私の背中をぱんぱんと叩きながら言う。これが地味に痛い。  私は笑いつつ、持ってきていたペットボトルのお茶を口に運んだ。  そんな他愛(たあい)ない話を続けていると、愛実が話題を変えてきた。 「ねえ、いつかはこのバイト辞めるの?」 「え? なんで?」  ふと愛実を見ると、その表情は真剣だった。 「お芝居、やっぱりやりたくなったって言ってたじゃん? 高校の時も悩んでたしさ」 「……うん。でも……」  短い沈黙が流れる。それを破ったのは愛実の方だった。 「あたしたち、今年で二十歳になるでしょ。高校はバイト禁止だったけど、今は自分でお金も稼げるようになったわけだよ。自分で稼いだお金を使うなら、螢の両親も許してくれるんじゃないの?」 「それは、どうかな……」  許してなどくれない。  両親は、自分たちが安心できる道しか選ばせてくれないのだから。  愛実にそう返そうとした時、休憩室の内線電話が鳴った。  私は子機まで走り寄ると、急いで通話ボタンを押して出た。 「はい、水沢です。……はい」  どうやら、私の担当場所の商品をお客さんが探していて、他の店員ではなかなか見つけられなかったらしい。  お客さんを待たせるわけにはいかない。 「私もう戻るね!」 「うん、あたしもそろそろ時間かな」  愛実の返事を聞くと、私は休憩室から急いで飛び出した。
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