1-7

1/1
前へ
/56ページ
次へ

1-7

「幼馴染みかぁ。いいね、仲が良くて楽しそうで。僕も、こっちでも友人を作ろうかなぁ。多分、夏休みもこっちに来ると思うし」 「あ、じゃあ、もし良かったら、私と連絡先を交換しない?」  私はバッグからスマホを取り出した。彼は悪い人ではなさそうだし、それに、また演技について聞きたいと思っていたからちょうどよかった。 「いいの? じゃあ、螢ちゃんはこっちでの演劇仲間だね。また、僕の相手役を引き受けてくれる?」 〝演劇仲間〟  その響きに、再び胸がざわめき出す。 「うん。星原くんが、私の台詞(せりふ)(まわ)しで我慢できるなら」 「僕はそんなに悪いとは思わなかったけど」  そんなことを話しながら、私と星原くんは、携帯番号とLINEで(つな)がることができた。 「はい、じゃあ、今から僕たちは友達だね。これからよろしく。僕のことは(けい)って呼んでよ。友達には名前で呼んでほしいんだ」 「分かった。佳くんって呼ぶね。なんか、自分の名前を言ってるみたいで、変な感じがする」 「あー! くそっ……」  突然、俊太が何かを誤魔化(ごまか)すような声を上げた。  いつもはクールぶってるくせに、雷だけは駄目なんだよねぇ。  そんな俊太を気の毒に思ったのか、佳くんが、自分のバッグの中を探りながら、俊太に声をかけた。 「ねぇ、野田くん、だっけ? 僕のウォークマンを使ってよ。気が紛れるんじゃないかな」 「お、おう。サンキュー……」  俊太は佳くんの顔をチラリと見ながら応えると、ウォークマンを受け取った。 「ちょっと俊太、なにその態度。もっと愛想よくしたらどうなの?」 「う、うるせぇな。俺は人見知りなんだよ。そんな事、お前は昔から知ってるだろうが。これでも少しは努力してんだぞ」  そんな俊太の言葉に、佳くんは安心したような様子で口を開いた。 「僕は野田くんを取って食ったりしないけどなぁ。でもまあ、少しずつ仲良くなっていこうよ」  そう言って、俊太の肩をぽんぽんと軽く叩いた。 「お、おう。俺のことは、俊太でいいぜ?」 「それじゃあ遠慮なく。俊太、今日から君と僕は友達だ」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加