2・彼は恋愛小説家

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彼女のプロフィールを見て,ちゃんとメッセージを送ってくれたのは裕一だけだった。 裕一は言う。 「それを『重い』って感じるのは,相手が本気じゃないからだろ。僕は違うよ。本気になれると思うから,君の境遇(きょうぐう)を『重い』とは感じない」 「そう……ですか」 恋愛小説を書くことを生業(なりわい)としているせいか,彼の恋愛観は少し変わっている。 「あのっ,裕一さん。あたし,あなたの小説,まだ読んだことなくて。……でも,せっかくお知り合いになれたから,これを機に読んでみようと思います」 この人のことを,もっと知りたい。そのためには,この人の書く作品の世界に触れるのが一番いいかもしれない。 「ありがとう,美優ちゃん。じゃあコレ,貸そうか?」 裕一が,さっきまで自分が読んでいた自著(じちょ)を差し出したが,美優はそれを断った。 「いえっ!自分で買って読みますからっ!」 「そう?」
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