2・彼は恋愛小説家

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分かった,と頷いて,裕一は文庫本を引っ込める。 「じゃあ,読んだら感想聞かせて?――あっ,連絡先交換しようか」 「はい」 二人はお互いの連絡先を,赤外線で交換した。 「――ところで,この後どうしようか?」 時刻はまだ夕方四時半。春奈のお迎えは母に頼んであるし,夕食にはまだ早すぎる。 それに……,一応出産経験者の美優だ。この後の展開は,大体想像がつく。大人同士の関係なんだし。 「美優ちゃんはこの後,何か予定ある?」 「あ……,今日は娘の三歳の誕生日なので。夜には家でお誕生会をやることになってて。あたしは,プレゼントを買って帰ってあげる約束してるんです」 「そうなんだ。娘さんの写真ってある?」 「はい。えーっと……,コレです」 美優は自分のスマホを操作して,娘の画像を裕一に見せた。
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