2・彼は恋愛小説家

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「名前は『春奈』っていいます。撮ってくれたのは父なんですけど」 そこに写っているのは,母娘の仲(むつ)まじいツーショット。 「へえ,可愛いねえ。君も,いいお母さんの顔してるよ」 「そうですか?ありがとうございます」 美優は少しはにかんだ。お世話抜きで,ストレートに褒めてくれる裕一に,何年ぶりかでキュンとなる。 「……あ。あたし,あなたの顔,どっかで見たと思ってたんです。そっか,本の裏表紙の写真で見たんだ……」 今言うことではないけれど。美優はこの瞬間に思い出したのだ。 「――うーんと。じゃあ,春奈ちゃんのプレゼント選び,僕も協力しようかな」 「えっ,いいんですか?」 「うん,いいよ。春奈ちゃんは,僕の娘になるかもしれない子だし。何より,君ともう少し一緒に過ごしたいからさ」 「え……。ああ,じゃあお願いします」 美優だって,もうちょっと彼と一緒にいたい。カフェでお茶しただけで,ハイさようならじゃ淋しすぎる。 「うん。じゃ,僕の車で一緒に行こう。――おもちゃ屋でいいのかな?」 「はい」
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