2・彼は恋愛小説家

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――しばらく車を走らせて,二人は幹線通り沿いの大型玩具店に到着した。 「ぬいぐるみのコーナーって,こっちですね」 美優は裕一をともない,ぬいぐるみ売り場へ足を向ける。……が。 「クマだけで,こんなに種類あるんだ……。どれにしよう?」 春奈からは「くまさんがほしい」としか聞いていないので,美優は困った。 売り場には大きさも色も毛並みも,様々なクマのぬいぐるみがずらーっと並んでいる。 どれもこれも可愛くて,とても選べない!でも,予算のこともあるし,全部買うなんて絶対にムリだ。大体,どうやって持って帰るのか。 「大きい方が,春奈ちゃんは喜ぶのかな?」 裕一が,一m(メートル)近い大きさのクマを抱えながら,美優に訊いた。 「多分……。でも高そうですよね。あたしが買えるのは……,コレくらいかなあ」 美優が選んだのは三〇(センチ)ほどの,幼い子供がやっと両手で抱えられるくらいの大きさのクマ。値段も手頃だ。 でも,彼が抱えている大きなクマさんも,モコモコしていて可愛いし……。美優としては,悩みどころ。 母親としては,両方とも買ってあげたいところだけれど,現実的には給料日前に多額の出費は痛い。どうしたものか。
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