2・彼は恋愛小説家

11/21
前へ
/86ページ
次へ
「う~~~~~~ん……」 美優が悩み,(うな)っていると,裕一が助け船を出してくれた。 「じゃあ,この大きいヤツは僕からってことにしよう。君はそっちを買ってあげたらいい」 「えっ?でも,あなたにそこまで甘えるワケには……」 美優はためらう。彼とは今日,初対面みたいなものなのに(実際,()()()のは今日が初めてだし)。 「いいからいいから。君だって,春奈ちゃんの喜ぶ顔,見たいだろ?だから遠慮しないで,ね?」 美優も,それを言われると弱い。そこまで押し切られてしまっては,「ノー」とは言えないので。 「……ありがとうございます。じゃあ,お言葉に甘えて。ただし,会計は別々で」 大小のクマさんを抱えて,二人はレジへ。 「裕一さん,あたし今,ふっと思ったんですけど」 「ん?」 「あたしたち二人って,周りからは夫婦に見えるんでしょうかね?」 美優は若干(じゃっかん)照れながら言った。裕一は優しく笑かけながら,それに答える。 「うん,そうかもねー♪」 「…………そうですか」 その様子が何だか楽しんでいるようで,美優はまたちょっと期待を(ふく)らませる。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加