2・彼は恋愛小説家

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会計が済むと,別々のレジにいた美優と裕一は,それぞれ同じタイミングで全く同じことを店員に訊かれた。 「ラッピングはどうしましょうか?」 「「お願いします」」 二人が同時に答えたので,美優が会計をした方のレジの店員が,おかしそうにクスクス笑いながら彼女に(というか二人に?)訊く。 「もしかして,ご夫婦ですか?」 「違います。……今のところは。ねえ,裕一さん?」 「ええ,今のところは。――『未来の』はつくかもしれませんけど」 (……やっぱり夫婦に見えるんだ。っていうか裕一さん,『未来の』って) 結婚,ちゃんと考えてくれてるんだなあ。……美優は,ほんのり胸があったかくなった。 ――ラッピングされたプレゼントが入ったビニール袋を,裕一は美優に渡し,自分は車のキーロックを外した。 「どうせなら,家の近くまで送ってくよ。家の場所教えて?」 「ありがとうございます。家は,恵比寿(えびす)の方です」 「分かった。恵比須ね」 美優から詳しい住所を聞いた彼は,カーナビにその住所を入力し,車をスタートさせた。 プレゼントの袋は,彼の車の後部座席につんである。
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