2・彼は恋愛小説家

13/21
前へ
/86ページ
次へ
「――ねえ,美優ちゃん。僕も春奈ちゃんのお誕生会に,参加させてもらうワケには……いかないよね?」 「え…………」 運転しながら突拍子もないことを言い出した裕一に,美優は絶句した。 その気持ちはとても嬉しい。けれど,春奈と彼は,まだ一面識もない。そんなんで今日いきなり二人を引き合わせたら,春奈にしてみれば「このおじちゃん,ダレ?」ってことになるだろう。 「はあ。それはちょっと……」 美優は困惑顔で,やんわりとお断りした。「やっぱりムリかあ」と,彼は苦笑い。どうやら,ダメもとで言ってみただけらしい。 「その代わりっていったら何ですけど。今度の日曜日,あたしお休みなんです。だから,春奈も連れて,三人でどこかに遊びに行きませんか?」 「えっ?春奈ちゃんに会わせてくれるの?」 ちょうど赤信号に引っかかり,ぱあっと表情が明るくなった裕一が,助手席の美優を見る。 「はい。裕一さんの都合がよければ,ですけど」 「うん,僕は大丈夫。作家はスケジュールの自由が()くから。……じゃあ,どこに行きたいか春奈ちゃんと相談して,僕に連絡して?」 「分かりました。そうだなあ……,二~三日中には連絡できると思います」 「オッケー☆連絡待ってるね」 ……次にまた(しかも,今度は春奈も交えて)会ってくれるということは,彼には美優と付き合っていくというはっきりとした意志がある,ということなのだろうか。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加