2・彼は恋愛小説家

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「――っていうか,スミマセン。あたしったら,初めてのデートなのに,こんな色気のない格好で」 帰り道で今更だが,美優は自分の身なりを一瞥(いちべつ)して,恥ずかしそうに言った。 カフェに着いた時には髪も乱れていたし,もっとヒドかったので,今の方がまだマシといえばマシなのだけれど。 「仕事帰りでチョクだったんだろ?仕方ないよ。僕は全然気にしてないから」 「そうですか?……じゃあ,日曜日には,ちょっとオシャレして来ようかな」 子連れなので,ヒラヒラのワンピースとかはムリだろうけれど,トップスくらいは可愛いのを選んでいいかも,と思ったりして……。 「うん。楽しみにしてる」 本当に「楽しみだ」と聞こえる口ぶりで,裕一は美優に言う。美優の胸はときめいた。もう何年ぶりだろう?男性の言動にキュンとなるのは。 ……というか,四年前はどうだったっけ?(アイツ)の言動に,自分はこんなにキュンキュンしていたかな……? 「……どうかした?何か考え事?」 「あ……,いえ,別に。――信号変わりますよ」 車はまた走り出した。もうすぐ,彼との楽しかった時間も終わる。次もまた会えるけれど。 (あたし,この人に恋していいのかな……?) 美優は,また考え込んだ。婚活で出会った以上,両想いなら最終(ゴール)地点は当然結婚のはず。だったら,途中経過で恋愛関係になるのも自然な流れだと思う。
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