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(お父さんにも言われたっけな。まずは恋愛から始めてもいいんじゃないか,って)
それなら,いきなり「結婚を前提に」よりも,「まずは恋人から」の方がいいかもしれない。じっくり時間をかけて,愛をはぐくんでいって……。
――車は,佐々原家の前に着いた。
「裕一さん,今日はホントにありがとうございました」
車を降り,後部座席から荷物を降ろした美優は,裕一にお礼を言った。
「いやいや。僕の方こそ,ありがとう。今日は楽しかったよ。なんか,自分が小さい子を持つ父親になったような感じがしたんだ。まだ独身なのにね」
そう言って笑う彼に,美優は思いきって言ってみる。……予定していたのとは違う形になってしまったけれど。
「じゃあ……,ホントに,春奈の父親になってくれませんか?別に,今すぐじゃなくていいんです。いつか,遠くない将来に」
「うん,いつかは……ね。僕も,そのつもりでいるよ」
(よかった……)
美優はホッとして,それでいて嬉しかった。彼が本気で,自分と結婚するつもりでいてくれていると分かったから。
「じゃあまずは,恋人としてお付き合い始めませんか?あたしと」
「うん,いいよ」
彼は大きく頷き,美優の頬に手を触れて,微笑みかけた。
「じゃ,僕はこれで失礼するよ。春奈ちゃんにヨロシクね。君からの連絡,楽しみに待ってるから。……美優」
「はい。……えっ⁉今,『美優』って……」
彼に頬に触れられたことと,いきなり呼び捨てにされさことで,彼女はドキッとした。でも,そうか。これが恋人同士ってことなんだと,次の瞬間に気づく。
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