2・彼は恋愛小説家

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「なんか,展開早すぎてコワいかも」 大人の恋愛って,こんなものなの?それとも,相手が恋愛小説家の彼だから特別なのかな……? 彼は今まで交際してきた歴代の恋人とも,今日自分にしたようなことをしていたの?ううん,もっと……進んだこととか?自分が四年前に,春奈を授かった時にしたような? 「……考えるの,やめよ」 美優は,自分の思考がどんどんあらぬ方向に()れていっていることに気づき,ポツリと呟いた。そして,首をぶんぶんと横に振る。 (ダメダメ!これじゃまるで,裕一さんがタラシみたいじゃん!) タラシ(イコール)女ったらし。でも,彼は違うと信じたい。だって,好きになったから。 コワいのは彼自身じゃなくて,今日一日の展開が早すぎて,これが全部夢だったらどうしよう,と思ってしまうこと。 でも,現実に起きたことなのは明らかだ。 肩からトートバッグを()げた彼女の両手には,裕一と二人で買ってきた娘への(おく)り物の袋を抱えているし,スマホを見れば,連絡先を交換した(あかし)が入っているし。……それに。
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