2・彼は恋愛小説家

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(……ナニ?もしかしてお父さん,おかしな想像してる?) (たと)えば,知り合って間もない彼と()()したとか("アレ"の意味は,読み手の想像にお(まか)せするけれど)。 「今日が春奈の誕生日じゃなかったら,泊まってきてもよかったのに。残念だな」 ……やっぱり。父は自分の娘を,そんなにふしだらな(言い方(ふる)っ!)娘だと思っているらしい。冗談(じょうだん)でも笑えない! 「お父さん!言っとくけど,あたしと彼とは今日会ったばっかりなの!いきなりそこまでの関係になるワケないでしょ⁉キスはしたけど,彼は……,(アイツ)とは違うと思うし……」 母と春奈に……特に,母には聞かれたくないので(春奈に聞かれても,内容は理解できないはずだ。まだ三歳だし),美優は小声で父に抗議した。 ただ,「健とは違う」とはっきり言い切れないのが,美優としては情けなくて,彼にも申し訳なくて。 「そんなに怒るなよ。お前だって,そいつといつかは……って思ってるんだろ?一応経験者なんだし」 「う……,まあねえ……」 別に,男性と体の関係を持つこと自体にはもう,何の恐怖心も感じないし,むしろ,裕一とそうなることを,美優は望んでいるのだけれど。 彼とどこかに泊まることになった時,春奈のことはどうしよう?娘を()ったらかして,恋愛にうつつをぬかすような母親にはなりたくないし。だからって,連れていくわけにも……。 「春奈のことを心配してるのか?だったら,大丈夫だ。お前がその男とよろしくやってる間は,父さんと母さんで,ちゃんと春奈の世話するから。任せなさい」 (お父さん,言い方!) 美優は父の言い草にこそ呆れたものの,その気持ちは嬉しかった。春奈も(なつ)いている,自分の両親が世話をしてくれるなら。両親も自分の結婚に協力的なのが分かったから。
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