2・彼は恋愛小説家

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この先,裕一と一夜を共にする機会が増えたら,春奈に淋しい思いをさせることも多くなるかもしれない,と思うと,我が子に申し訳なくて。 元はといえば,この婚活は,春奈の父親になってくれそうな人を探そうと思って始めたはずなのに。本末(ほんまつ)転倒(てんとう)じゃないだろうか? 「さみしかった?ゴメンね。でも,じいじもばあばもいてくれたから,さみしくなかったでしょ?」 ……そうだ。自分は一人じゃない。父も母も,娘である自分の婚活の背中を押してくれている。そう思ったら,春奈への罪悪感が少し消えた気がした。 (春奈(この子)だって,きっといつか分かってくれるよね) 親子三人で幸せになるために,ママが頑張(がんば)っていたことを――。 「春奈,一緒にお誕生日のお祝いしよ?ケーキ食べようね。行こっ」 「うんっ!」 美優は春奈を(うなが)し,母の待つリビングに向かって歩いて行った――。
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