3・「パパ」と呼ばれる日

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「――ねえ,春奈。今度の日曜日,ママとお出かけしよう。春奈はどこに行きたい?」 保育園からの帰り,いつものように母娘で仲良く手を繋いで歩きながら,美優は我が子に訊いた。 「えっ,おでかけ?やったあ!ハルたんね,どうぶつえんにいきたーい!」 たどたどしく,春奈は答える。 「動物園ね,分かった。春奈はホントに,動物さんが好きだねえ」 頷きながら,美優ママは嬉しかった。動物好きな子は,心の優しい子に育つから。この子もきっと,優しい女の子に成長するに違いない。 前日,「(名目上,両方とも)ママから」とプレゼントした大小二匹のクマさんも,春奈はとても気に入ってくれた。彼女の中で二匹は,「大きい子はママで,小さい子は子グマちゃん」ということになっているらしい。 二匹のクマは昨夜(ゆうべ),この母娘と同じベッドで寝かされていた。ただでさえ二人で入ると(せま)いセミダブルベッドが,昨夜から余計に窮屈(きゅうくつ)になったのは言うまでもない。 ――それはともかく。美優は娘に,もう一つ言っておきたいことがあった。 「春奈,あのね。日曜日にね,春奈に会わせたい人がいるんだ。動物園に行く時,その人が一緒でもいいかな?」
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