3・「パパ」と呼ばれる日

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この子に裕一を会わせて,「この人がパパになる人だよ」と紹介したいのだ。春奈は一体,どんな顔をするだろう? ついでに,「あの大きなクマさんは,実はこの人からのプレゼントなんだよ」と打ち明けようかと思っていたり……。 「うん,いいよ!」 春奈は,あっさりOKしてくれた。……多分,母親の目論見(もくろみ)など分かってはいないだろうけれど。 何より,この子が人見知りする子じゃなくてよかったなあと思う。「知らない人と一緒にお出かけしたくない」と言われたら,それこそ困ってしまうから。 「いいの,春奈?ありがと!じゃあ,日曜日は動物園ね。その人にも言っとくからね」 美優は,家に帰ったら裕一に電話することにした。もしかしたら,自宅で仕事をしているかもしれないけれど,「気にしなくていいから」と本人から言われているのだ。   ♪ ♪ ♪ …… 母娘が再び家に向かって歩いていると,美優のトートバッグの外ポケットの中でスマホが鳴った。(かな)でているのは,電話の着信音。それも,家族からかかってきた時にのみ鳴る着信音だ。 「あっ,春奈ストップ。ばあばからお電話だから,ちょっと待っててね。――もしもし」
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