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『うん,いいよ。美優の頼みだったら,喜んでサインくらい書くよ。お安い御用だって』
あっさりOKしてもらえた。恋人特権,恐るべし!ダメもとで言っただけなのに。
「ありがとうございます!いいんですか,ホントに?母も喜びます!」
思わず声が大きくなり,美優は「あ」と呟いて隣りで寝ている娘をそっと見遣った。
……大丈夫。春奈が目を覚ます気配はないようだ。
「すいません,裕一さん。そろそろ切りますね。お忙しい時に電話してゴメンナサイ」
『いやいや,わざわざ連絡ありがとね。ホントは春奈ちゃんの声も聴きたかったけど,眠ってるんじゃね。起こすのも忍びないし』
「ええ,そうですよね。お気遣いありがとうございます。それじゃ,日曜日に」
『うん,楽しみにしてるから。じゃ,おやすみ,美優』
「はい」と頷いて,美優は電話を切った。
スマホで時間を確かめると,夜十時を少しばかり過ぎたところ。まだ寝るには早い。
「さっとシャワーでも浴びてくるか……」
これだけぐっすり眠っていたら,春奈は父が言っていた通り,朝まで起きることはないだろう。
美優は着替えを用意して,一階のキッチン横の脱衣スペースへ。その奥がバスルームである。
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