3・「パパ」と呼ばれる日

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『うん,いいよ。美優の頼みだったら,喜んでサインくらい書くよ。お安い御用(ごよう)だって』 あっさりOKしてもらえた。恋人特権,(おそ)るべし!ダメもとで言っただけなのに。 「ありがとうございます!いいんですか,ホントに?母も喜びます!」 思わず声が大きくなり,美優は「あ」と呟いて隣りで寝ている娘をそっと見()った。 ……大丈夫。春奈が目を覚ます気配はないようだ。 「すいません,裕一さん。そろそろ切りますね。お忙しい時に電話してゴメンナサイ」 『いやいや,わざわざ連絡ありがとね。ホントは春奈ちゃんの声も聴きたかったけど,眠ってるんじゃね。起こすのも忍びないし』 「ええ,そうですよね。お気遣いありがとうございます。それじゃ,日曜日に」 『うん,楽しみにしてるから。じゃ,おやすみ,美優』 「はい」と頷いて,美優は電話を切った。 スマホで時間を確かめると,夜十時を少しばかり過ぎたところ。まだ寝るには早い。 「さっとシャワーでも浴びてくるか……」 これだけぐっすり眠っていたら,春奈は父が言っていた通り,朝まで起きることはないだろう。 美優は着替えを用意して,一階のキッチン横の脱衣スペースへ。その奥がバスルームである。
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