3・「パパ」と呼ばれる日

13/27
前へ
/86ページ
次へ
シャワーを浴びてさっぱりし,(のど)(かわ)いたので冷蔵庫から麦茶を出してリビングへ行くと……。 「あれ?お父さん,まだ起きてたの?お母さんは?」 父が一人,ソファーに座って缶ビールを(かたむ)けていた。柿ピーをお供にして。 「母さんは,二階の部屋にいるよ。何でも,ネット配信で見たいドラマがあるんだと」 「へえ。お父さん,いいもの飲んでんじゃんよ。グラス持ってくるから,あたしにもちょっとちょうだい」 湯上がりなら,麦茶よりビール(こっち)でグイッとの方がいいかもしれない。 「お前,明日休みだからってな……。春奈に『ママ,おさけくさい~』って言われるぞ」 「コップ一杯飲んだくらいじゃ言われないって。大丈夫っ」 美優は呆れる父にそう言い返して,麦茶の五〇〇ml(ミリリットル)ペットボトルをキッチンに戻しに行った。そして,グラスを持ってリビングに戻る。 彼女は手酌(てじゃく)でビールをグラスに注ぎ,半分くらいを一気にグビグビ飲んだ。 「ぷはーっ,うまい!生き返ったあ!」 口の上にビールの泡でヒゲを作って唸る我が娘に,父が呆れてボヤく。 「お前はオヤジか」 「いいじゃん,別に。やぁっと堂々とお酒飲める歳になったんだからさあ」 二十歳である。現行の法律上,飲酒・喫煙(きつえん)が認められている年齢である。美優はタバコは吸わないが。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加