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「とか言って,一昨日『お酒買えるようになったから』っつって,一人で買ってきたシャンパンボトル空けてたのはどこの誰だ?」
「さ,さあ……?」
美優はあさっての方向を見た。実は彼女の飲酒は,この夜が初めてではなかったのだ。しかも,アルコールにはかなり強いようである。
「実は父さんな,お前は二十歳過ぎても,酒は飲まないと思ってたんだ」
「えっ?」
父にまたからかわれるのかと思ったのに,意外なことを言われ,美優は手にしているグラスと父の顔とを交互に見比べた。
「お前,早くに春奈産んだろ?だから,二十歳過ぎても体がアルコールを受け付けなくなるんじゃないかと思ってな」
「それは,人それぞれなんじゃないの?そういう人もいるだろうけど,現にあたしは何ともないし」
要するに,元の体質の問題なんじゃないだろうか。心配してくれるのはありがたいけれど。
美優は柿ピーをつまみ,ビールをもう一口飲んだ。すると,父が別の話を振ってくる。
「そういや,昨日買ってきたあのデカい方のクマ,あれお前が買ったんじゃないだろ?」
「えっ,なんで分かったの?……確かに,あれは彼が買ってくれたんだけど」
父にも母にも,本当のことはまだ話していない。もちろん,春奈にもナイショである。
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