3・「パパ」と呼ばれる日

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「――お父さん,あたし,ちょっと()いが回ってきたかも。もう寝るね。グラスは……」 「ああ,おやすみ。グラスは置いとけ。父さんが片付けとくから」 「うん,ありがと」 パジャマ姿の美優は(ちなみに,髪はとっくに乾かしてある),そのまま寝室まで歩いて行き,春奈が眠っているベッドに(もぐ)り込んだ。アルコールのせいか眠りは深く,翌日の朝は九時頃,父が出勤した後まで起きられなかったのである。 ――裕一と約束していた,日曜日の朝。 「じいじ,ばあば,いってきま~す!」 「じゃ,行ってくるね」 身支度を済ませて出かける美優と春奈の母娘は,いつもよりオシャレだった。 春奈は可愛いピンク色のワンピースに黄色い(くつ)。背中まであるサラサラの長い髪は,祖母である奈那子にツインテールに()ってもらっている。お気に入りのパンダちゃんリュックを背負(しょ)って,ゴキゲンだ。 美優も今日は,オシャレめカジュアルである。女性らしい白の七分(しちぶ)(そで)カットソーに淡いピンクのロングジレを羽織(はお)り,刺しゅう入りのインディゴブルーのデニムパンツ。靴もスニーカーではなくフラットパンプスで,バッグはスエードのショルダーバッグだ。
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