3・「パパ」と呼ばれる日

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今日初めて分かったけれど,裕一は春奈に甘い。これじゃ,春奈のためにもよくない。 この調子でいくと,彼は結婚後も,春奈に甘々(あまあま)な父親になりそうで,美優は急に心配になってきた。 「――ママー,ゆーいちおじさんにコレ,かってもらったよー☆」 ショップの袋を提げた春奈が,ルンルンで美優の元に戻ってきた。隣りには,申し訳なさげな表情の裕一が。 「ゴメンね,美優。僕,余計なことしちまったかな?」 「いえ,ありがとうございます。こちらこそゴメンなさい!春奈があなたにおねだりしちゃったみたいで……」 美優は顔から火が出るくらい恥ずかしくなって,穴があったら入ってその中に()まってしまいたいと思った。 「いやいや。僕ら,もう他人じゃないんだからさあ。そんなに謝ってばっかりいないで。さっき,春奈ちゃんに『パパ』って呼んでもらえたし」 「ええっ⁉春奈,……ホントなの?」 あれだけ「いつ話そうか」と悩んでいたのに,自分の知らないうちにそんなことになっていたなんて……! 「うんっ!ゆーいちおじさん,ハルたんのパパになるんでしょ?」 「あー……,うん。そうだよ」 頷きながら,美優の心中(しんちゅう)は複雑だった。
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