3・「パパ」と呼ばれる日

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(確かにそうなんだけど。なんか,あたし一人だけ蚊帳(かや)の外みたいで(くや)しいかも) 呼ぶならせめて,自分もいる時にしてほしかった。そしたら,喜びを共有できたのに! ……というか。 「春奈が,自分から『パパ』って呼んだんですか?」 美優の問いに,彼はあっさり「うん」と頷いた。 「多分だけど,あの子にも何となくは分かってたんじゃないかなあ?三歳くらいって,そういうこと理解できなくもない年頃だと思うし。……特に,女の子は」 裕一の言葉で,美優は自分自身の幼かった頃を思い出す。 「そうかもしれませんね。あたしも春奈くらいの頃には,よく両親の話に首突っこんだりしてた覚えがありますから」 母親の自分が悩むまでもなく,春奈(この子)は何もかも分かっていて,裕一と打ち解けていたのかもしれない。彼が,父親(パパ)になる人なんだ,と。 「――パパー,ママー,ハルたんおなかすいたー」 (……!今,また「パパ」って!今度はあたしの前で,「パパ」って呼んでくれた!) 美優の表情が,ぱあっと明るくなる。春奈はエスパーなの?ママが考えてたこと,分かっちゃうなんてスゴい!
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