4・初めての一夜……

3/20
前へ
/86ページ
次へ
裕一(あの人)に少しでも,自分を魅力的な女性に見せたいから。大人の関係にふさわしい,ちゃんとした大人の女性に。 ただでさえ小柄で童顔(どうがん)で,ヘタをすれば女子高生に見られかねないのだ。これくらい()けたって,バチは当たらないだろう。 「ふー……っ,よしっ!そろそろ行こう」 美優は両手で自分の頬をパンッと(たた)き,いつもより大きめのバッグを肩から提げて寝室を出た。じきに,彼が車で迎えに来る。 「――お母さん,あたしそろそろ行ってくるね。春奈のこと,よろしく頼んだよ」 「はいはい。お父さんと二人で,ちゃんとお世話するから。浜田先生によろしくね」 「……分かった,伝えとく」 美優は呆れた。娘の恋人に,何をよろしくするんだか。 「春奈。ママ,裕一パパのところにお泊りしてくるから。じいじとばあばのいうことちゃーんと聞いて,いい子にしてるんだよ」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加