4・初めての一夜……

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「……うん。ママ,あしたはおうちにかえってくる?」 まだ幼い春奈が,無垢(むく)な瞳でじっと見つめてくる。美優がしゃがんで目線を合わせているので,まっすぐに。 母親としては,まだ我が()に対して後ろめたさがあった。「お願いだから,泣かないでね」と,美優は祈るような気持ちで春奈に言う。 「うん,大丈夫。明日にはちゃんと帰ってくるよ。明日,保育園のお迎えにはママ行けるから。行く時はじいじと一緒に行ってね」 「うん,わかった」 春奈が駄々をこねないでくれて,美優はホッとした。靴を履くと,可愛い我が娘をぎゅーっとハグして「行ってきます!」と玄関を飛び出した。 いつもなら履かない,というかもう何年も履いていない一〇センチ以上あるヒールのパンプスは,久しぶりに履いて歩くとなかなか慣れない。まあ,「歩く」といっても,家の前をウロウロしていただけだけれど。 やがて車のヘッドライトが見え,いつもの白いミニバンが美優の目の前に停まった。
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