4・初めての一夜……

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「もちろん,あたしも退会したよ。だって,裕一さん以上にいい人に出会えそうもないから」 こんなに彼のことが好きで,彼も美優や春奈のことを大切にしてくれて。今とっても幸せなのに,他の男性からアプローチされても困るだけだ。 「あたしには,あなたがいてくれたらいいから。……あ,春奈は別ね」 裕一がどんなにいい人でも,春奈のことを邪見に扱うような人だったら,美優は彼を将来のパートナーとして選んでいなかった。 彼が春奈の母親であることも踏まえて美優を好きになってくれたから,美優は彼と交際することを決めたのだ。 「じゃ,今日も春奈ちゃんのこと心配だろ?あとで電話してあげなよ」 「うん,そうしよっかな。ありがと」 春奈の世話は両親に頼んできたけれど,本当は心配だった。 春奈(あの子)にとって,ママがいない夜は初めてだ。いくら祖父母がいてくれたって,夜遅くまでグズってなかなか寝付かない可能性は充分ある。そのことで勤め人である父の秀雄が朝起きられなかったら大変だ。 (春奈,淋しがってないといいけどな……) 車窓の向こうの流れる景色を目で追いながら,美優が思うのは今日この後のこと……ではなく我が子のことだった。
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