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プロローグ ~十六歳の九月~
まだ蒸し暑い九月某日。都内某所のセルフ式カフェのテーブル席に,ムスッとした顔で向かい合う,一組の男女の姿があった。
女の子の方は,佐々原美優。十六歳で,この年の春に都立高校に入学したばかりの一年生。この物語のヒロインである。
男の方は,美優の彼氏で金村健。彼女より三つ年上のフリーター。髪は金髪で,どう見てもマジメ人間ではない。
「――ねえケン。あたし,子供できたみたいなんだ」
学校帰りらしく,白シャツにプリーツスカートの制服姿の美優は,アイスラテをグビッと飲んでから話を切り出した。
高校一年生で妊娠してしまったという,かなりショッキングな事実。それでも当事者である彼女は,それを受け入れた。
「あっそ。……そんで?」
美優を妊娠させた張本人の健はというと,特に悪びれる様子もなく,顔色一つ変えずにあっけらかんとアイスコーヒー(ブラック)を飲んでいる。まるで,他人事みたいに。
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