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私は幼児期の五歳半ばに至るまでの数年を、日本のとある地方で過ごした。
地方といっても繊維産業で古くから栄えた町で、田畑などは見渡す限りにあまりなく、やたらと人の多い、ごちゃごちゃと民家の建ち並ぶ”少しばかり間口の広い下町”といった雰囲気の田舎であった。
男ばかりに囲まれて育った。
私は四人兄弟の三番目。
すぐ真近くに住む従兄弟達が二組四人、内、一人は私と同じ歳で、一つ下にもう一人。
その中で私が唯一、女であった。
だからといって、とりわけ無骨な家庭環境に育ったという訳ではない。
彼等は優しく穏やかな性格であったし、男児の遊びも一通りはするが、”ライフワークはヌイグルミ達のお世話”というような、どちらかというと女性的な性質の子供であったので、兄弟の中で育ったというよりは、見た目も環境も寧ろ姉妹の中にあったようだった。
身内の私がこう言うのも何だが、兄弟達はその容貌から近所でも評判の、特に目立った子供達だった。
大人達の言を借りて言うならば、肌の色は抜けるように白く、目元涼しく、幼き頃は人形のよう、長じてからは少女のようと、誰彼無しにもて囃され、褒めそやされて育った彼等の中あって、彼等と似つかない私はみそっかす。
単に中間子というだけの理由ではない、従兄弟兄弟の中で唯一人” 女として生まれた ”ということ以外、傍目には特徴のない子供だった。
容姿が在り来たりであるばかりではない。
従兄弟兄弟の中でも、性格はとりわけ気難しく何においても懐疑的、警戒心が強く、理屈っぽく、気丈で頑固。
恐らくは祖父の影響であろう男児向けの遊びや服装を好み、立ち居振る舞いも粗雑。
男勝りと喩えてなんら遜色のない気質に加えて、それらが如何なく容姿に顕われており、女らしさや愛嬌でさえ他の兄弟達に劣る、顕著な喩えを用いるならば”ありふれた男児そのもの”といった子供だった。
兄弟達の中で私はとりわけ祖父に可愛がられていたが、私の居ないところで祖父はよく私を指して『あれが男児であったならさぞや』とこぼしていたという。
しかも見た目や気質ばかりではなく、私の名は字面も含めて、男名とも女名とも聞こえ、見えもするもので、実際、中学に上がる辺りまでは誰からも男児に間違われるのが常だった。
故に何故”あの人達”は、私が女児であることがわかったのだろう、と思う。
前置きが長くなったが、ここからが私の身に起きた出来事である。
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