六日

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六日

「あらま!どうしたのコレ!」 ババアの声で微睡みから引き戻される。 その手には青々としげった鉢植えがあった。 「…?植物でしょ」 「この前までこんなだったのに!」 「ああ…」 なんの冗談か、俺が嫌がらせを続けた結果芽が出ないどころか成長した奇妙な植物に、ババアは興味を持ったらしかった。 「たくさんお水をあげなきゃね!あら、ジョウロがないわ」 適当に相槌を打っていたら、買い物とかなんとか言って出て行った。 風に頬を撫でられて顔を上げる。 開けられた窓の外で、葉桜がサワサワとそよいでいる。 『昨日はよくもあんなモノ寄越してくれたな』 幻聴だ。 テレビのラップ音のようにざらついた、不快な音だ。 「毎日やってたよ」 知らなかったかもしれないけど、と独り言のように呟くと、恨みつらみ連ねていた幻聴がピタッと止まった。
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