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八日
『おいコラ、チッ!俺様の葉っぱに止まってんじゃねえぞ』
余命を宣告された。
今まで、家族が医者に口止めしていたらしい。
『ふぅ。…あん?ンだこらやんのか』
ババアくらいしか見舞いに来ないくせに口止めとは、余計な世話にも程がある。
病気がわかってから、俺はずっと覚悟をしていたのに。
元々、見つかった時には手遅れだったのだ。
今回も、検査入院のはずが、期間が伸びていることは分かっていた。雪崩のような体調不良で、無気力に寝ている時間も増えていた。
『シュッ!シュッ!オラ!って俺動けねーし!坊主、このクソどうにかしろよ!』
雑音が邪魔だ。
横を振り向くと、吸命花の葉にテントウムシがついていた。
指で払いのけると、テントウムシは縮こまって机に転がり落ちる。
(落ち込む暇もないのか)
ぼんやりとしていたら、いつのまにか夜が来ていた。
『おい、飯』
この、高慢チキの、こんこんちきめ。
自分の欲求ばかり通そうとするコイツには、本当に腹が立つ。正確には俺の幻聴なんだろうが、知ったことではない。いつものしゃがれ声が煩わしくてたまらない。
思考も邪魔された腹いせに、二回ほど直接射精してやった。
『!……いいのかよ、そんなにくれて』
幻聴はギャーギャー喚くかと思ったが、そんなこともなかった。
『おい』
「いいのさ」
でも、流石に二回は疲れるな。
額の汗を拭って見上げた天井は、真っ黒だった。
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