仕事場の階段に爪が落ちてる話

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仕事場の階段に爪が落ちてる話

9 :人目の二階が仕事場さん 特に曰く付きとかそういう話は聞いたことなかったんだけど。 うちの仕事場、五階建てビルの三階から四階に続く階段に、「爪」が落ちる。 最初に気づいたのは掃除のおばさん。モップがけをしてたら洗うときに何か引っかかってるのに気付いて、取り除いたら人間の爪、だったらしい。 爪切りをして落ちたような、短いやつじゃない。完全に生爪、ベリッと剥がして、まだ乾ききらない血と僅かな肉片がついているようなものだった。 普通そんなものが落ちてるわけないし、悪戯と呼ぶには少々行き過ぎている。 念のため、おばさんはビルの責任者に連絡して、事情を話したんだけど。まあ、ビルの関係者たちに怪我をしている者がいなければ、周囲で事件があったという話もない。 気味が悪いけど、ビルに設置されている防犯カメラにも異常はなかったし、一応様子見というか、何もしない方向で指示を受けたんだよね。 でも、話はそれで終わりじゃなかった。 10 :人目の二階が仕事場さん 生爪はその後も時々、ふと階段に目を向けた時なんかに、落ちていた。 掃除のおばさんから始まり、ビルで働く関係者たちも階段に落ちている爪を見た。 あまりに目撃証言が続くから、責任者も困って、警察に来てもらったこともあるんだけど。彼らがビルを訪れる頃には、生爪は何処かへ消え、やはり防犯カメラには何の異常もない。……何も、映らない。 一体誰が何のために、という話から、ビルに憑いている、或いは誰かに憑いている霊だとか、そういったものが落としている、という噂話が広がるまでそう時間はかからなかった。 ──まあ、そんな超常的なことが起きるからといって、仕事を止めることはできない。 取引先に「生爪落とす霊が出るから暫く仕事はお休みします」なんて馬鹿げたこと言えないし、仕事は通常通り行われていた。 階段に落ちる爪がなんなのかはわからない。けど見つけて気分が悪くなる以外に害はないし、見つけて放置したところで増える、ということもない。 いつの間にか消えてすらいるし、見ないフリ気付かないフリ、で、なるべく件の階段には近づかないようにが暗黙の了解となっていた。 それが受け入れられない何人かは辞めていったけどね。 11:人目の名無しさん 正気度を疑う 身近にそれを落とす人間がいるかもしれないって精神削がれる俺なら 12 :人目の名無しさん 結局霊の仕業ってこと? お祓いとかしないで放置したの? そのうち消えるとしても、生爪落ちる仕事場で仕事なんて絶対無理なんだけど 13 :人目の二階が仕事場さん お祓いは一応、近くのお寺さんにやってもらったはず。 でも効果はよくわからなかった。あれが怪異だっていうなら、怪異の姿は俺たちに見えないわけだし。 >>11が言ってくれたお祓いだけど、効いたのか効いてないのか、それとも、怒らせたのか。 とにかく爪が落ちる現象は止まらなかった。…お祓いの前より若干、頻度は減った気がするけどね。 掃除のおばさんが階段を掃除して、完全に何も落ちてないことを確認しても、その直後にビルの関係者が階段を通ると、落ちているのに気づく。 監視カメラには、彼女たち以外何も映ってないというのに、突然現れる。 ……まあ、強いて言えば。 お祓いの効果云々というより、従業員が数名辞めてからかな。 階段に落ちる爪に変化があったんだ。 以前までは「ただの生爪」だったのに、この頃落ちている爪は「土汚れのある爪」なんだよ。 薄っすら乾いた土で曇って、爪先には黒い土が付いていた。……あれは、まるで──固い土を必死に掻いて、その果てに落ちたような。 ビルの周辺に、土に触れられるような場所なんてないのに、何を引っ掻いたのかな。
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