存在しない筈の友人から電話がきた話

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存在しない筈の友人から電話がきた話

58 :人目の電話の向こうさん あとから考えたらそんな人存在しない筈なのに、その時はなんの疑問も持たずに相手のことを認識して、当たり前に会話をしていたって話。 数ヶ月前、○○ちゃんから電話がきた。 スマホのロック画面にはその時確かに誰かの名前が映っていて、「○○ちゃんから!えっえっめっちゃ久し振りじゃん!何年振りだろ!」とか無駄にテンション上げながら電話に出た。 電話の向こうの声も自分と同じような感じで、電話越しだけど久し振りに話せたのが嬉しいって楽しそうに声を弾ませていた。 ○○ちゃんは特に用事があって電話をしてきたわけじゃなくて、ふと、あんなに仲が良かったのに随分声を聞いてないなーって思い至り、スマホを取ったのだとか。 だから一緒に通った学校の話だとか、それぞれの部活での思い出話とか、今みんな何してるのかなあって想像を話したり、あとは近状報告なんかをしたりした。 59 :人目の電話の向こうさん 暫くして、ふと部屋の暗さが気になった。 電話がかかってきたのは昼を少し過ぎた辺りだったのに、いつの間にかスマホの光だけが頼りってくらいの暗さになってて、あーいつの間に日落ちたんだろ、夕飯作ってないや、なんて呑気なことを思いつつ、流石にそろそろ切らないとなって思ったのね。 でも、名残惜しいような、もう少しだけ話していたいような。随分前に置いてきてしまった学生時代の記憶が鮮やかに蘇っていて、もうちょっと、もうちょっとだけ彼女と話していたいっていう思いもあって、なかなか電話は切れずズルズルと時間だけが過ぎていった。 そしたら、急に部屋の扉がドンドンドンドンドン!って強く叩かれた。 一瞬息が止まって、心臓が早鐘を打って、スマホを握り締めたけど、「××!いつまで電話してるの、とっくに夕食冷めてるよ!」という母の声に一気に力が抜けた。お母さんだった。 部屋の外に向かってすぐに行くと叫んで、○○ちゃんに謝って電話を切ろうとしたら電話は切れていた。どうやら、驚いた拍子に通話終了ボタンに触れてたらしい。 お母さんの怒鳴り声が聞こえた時、電話の向こうで何か言っていたような気がしたんだけど、向こうにもお母さんの声は聞こえてただろうし、かけ直すのが少しばかり遅くなったところで気を悪くするような間柄でもなかったから、私は部屋を出ることを優先した。 ──部屋の外、怒り心頭のお母さんがいるはずの場所は真っ暗で、誰もいなかった。 そうだ。私、半年前から一人暮らししてんじゃん。お母さんの声がするわけないのに。 背筋に寒いものを感じつつ、真っ暗な部屋の電気をつけた。目に入った時計は、午前2時過ぎを指していた。 60 :人目の電話の向こうさん 長くなってごめんね、これが最後。 ここまで書いたらもうわかると思うけど、昼過ぎから半日、時間の経過を忘れて電話なんて普通じゃない。いくら久し振りでも、気が付いたら時間も寝食も忘れて話し続けていた、なんてことは早々起こらない。 なんでこんな時間になってるんだろう。何話してたんだっけ、…そう考えた時、私は○○ちゃんとの電話の内容、具体的な話を何一つ思い出せないことに気が付いた。 一緒に通っていた学校に、○○ちゃんとの思い出はない。一緒に遊んだ記憶も、出会った時の記憶も、全くない。それなのに、電話をしていた時は彼女の話に疑問なんて一つも湧かなかった。 せめて名前だけでも、スマホの画面には確かに○○ちゃんの名前が出ていたから。そう思って開いた通話履歴には、非通知の字だけが存在していた。 私は半日もの間、存在したいはずの友人と楽しく電話していたらしい。 今はもう全く思い出せない、○○ちゃん。あの時電話を切らなかったら、どうなっていたんだろう。 ……あ、あの時聞こえたお母さんの声だけど。あれも納得いかないから、一度実家に連絡してみたんだけど、お母さんにはポカンとした顔をされてしまった。あの電話は実は悪いもので、お母さんは助けてくれたのかと思ったけど、全く心当たりはないらしい。 だからお母さんに何かあったとかそういうこともないので!モヤモヤする終わり方だけど私からは以上です! 61 :人目の名無しさん 存在しないナニかと半日楽しくお話しして、気が付いたら深夜…というか午前2時って丑三つ時じゃないですか…… 62 :人目の名無しさん 会話に疑問を感じない、当たり前のこととして言葉を交わしているってことは、記憶に干渉するような怪異なのか? イマイチよくわからんなぁ 63 :人目の名無しさん または、>>58に存在しない人間が電話をかけてきたんじゃなく、存在していたのに>>58が電話の相手を認識できなくなってる…とか 64 :人目の名無しさん 電話の向こうは見ることができないからね 何にしても、止めてくれた人には感謝しといたほうがいいよ
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