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「大丈夫だよ」
「でも、泣いてるよ」
女の子が自分のハンカチを差し出してきた。
頬を拭うと、確かに涙が流れていた。
「ありがとう。ハンカチ汚れちゃうから気持ちだけ受け取っておくね」
やんわりハンカチを断ると、男の子と女の子は目を見合わせ、頷くとこちらに向き直った。
「お兄ちゃんに僕らの秘密基地に連れて行ってあげる」
「あそこで遊んだら楽しいから悲しい気持ちも吹き飛ぶよ」
キャッキャッと子供らしくはしゃぐ二人。
彼らを見て、俺の中に黒い感情が沸き上がった。
俺はつい先程地の底に突き落とされたばかりだというのに、この子らは何も知らずに無邪気にしている。
それが癪に障った。
しかし、ここは大人な部分を全面に出して、それを悟られないように二人と翌日この公園で十時に待ち合わせの約束をしてその日は別れた。
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