おまけ話④柴崎家の朝

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おまけ話④柴崎家の朝

☆2000スターありがとうございます記念短編☆さっそくはじまります! かなり、あまーいです  いつも、朝からごきげんのはずの、あおいの様子がおかしかった。起きているはずなのに、なかなかベッドから下りてこない。さくらはコンロの火を止め、寝室にいるあおいを見に行った。  全身、すっぽりとおふとんをかぶっている。 「おはよう。ん、あおい?」 「……」  むくれている。怒っている? さくらはおふとんをめくってあおいの額に手を当てた。熱はない。 「どこか痛いの?」 「……」  目は開いているのに、返事をしない。虚空を見つめている。 「赤ちゃんじゃないんだし、ことばに出してみて。まま、待っているから、ゆっくりでいいよ」  あおいは、ベッドの上をころころと転がったと思ったら、類の枕をむんずとつかみ、壁に投げつけた。  枕は函館みやげのルームライトに当たって、床に転がった。中身、飛び出るかと思った。 「がうぅ!」  ええ? 狂暴化? 「あおい、どうしたの」 「いじめてた!」 「……は?」 「ぱぱ、ままのこと、いじめてた! ままが、いやだって、やめてってゆってるのに、ぱぱ、ままのこと、ぎゅっておさえて……ぐすっ」  しまった。夫婦のあれこれ、また聞かれちゃった? 「ぱぱ、わるいこ! おに。あくま!」  そろそろ別に寝たほうがいいかもしれない。 「おはよう。騒がしいけど、どうしたの」  タオル一枚を腰に巻きつけたままの類が、朝シャワーから戻ってきた。 「ああ、類くん。あおいが……」 「おに! あくま! ちみもーりょー! あくりょうたいさんっ」  泣きながら、手ををグーにして類に突進した。ぽこぽこと、類の身体をたたく。たたきまくる。 「うっわ! あおい、そんなにたたいたら、タオルがずり下がっちゃうって。大切なところが露出しちゃう。なに、ぼくがあくま? 悪魔なんて、久しぶりに言われたし。しかも三歳児が魑魅魍魎なんて知ってんの普通? テレビの影響?」 「ままをいじめたら、ゆるさない」 「いじめた? ままを?」 「あおい、せいぎのみかた! ぱぱ、わるいこ!」  あおいをなだめるのに必死な類のタオルは、はらりと床面に落ちた。ああ、丸見えなんですが。 「待って、落ち着いて」  さくらもあおいを止めに入った。 「あおい、ねむくてうごけなかった。まま、かわいそうだった! あんあん、ないてた!」 「ああ。やっぱり起きていたんだね、昨日。よしよし。よるはねんねでいいんだよ、あおい」 「心当たり、あるの類くん?」 「さくらの上にのっかっているとき、あおいと目が合ったような気がしたんだけど、気のせいじゃなかったんだ。半分寝ぼけた状態か」 「起きていた? あおいが?」 「まあ、さくらはぼくに必死にしがみついて夢中だったから、分からなくて当然だよ。『いやあ』『やめて』を、繰り返したでしょ」 「……だって、すごいんだもん……」 「それがよくなかったんだ。あおい、勘違いさせちゃった」 「私のせい?」 「気持ちいいときは、正直にそう言えばいい。『もっとして』『ほしい』って。さくらは、マイナスのことばであえぐの禁止ね」 「そういうオチ? 中断するとか、移動すればよかったねとか、夫婦と子どものベッド、別々にしようとかいう提案じゃなく?」 「あおい」  類はあおいをだっこした。まだ暴れているものの、父の力には勝てない。  ぜ……全裸で娘をだっこする姿も、うつくしいんですが! 「ごめんね。ままが恥ずかしがりやさんなのがいけなかったんだ。ぱぱは、ままをいじめてなんかいないよ、だいすきだよ。でも、女はね、心で思っていることと、反対のことを口に出す生き物なんだ」 「はんたい?」 「そう。すきなのに、きらいとか。いいのに、いやだとか」 「あおい、そんなことしないもん」  ぷいっと横を向く、あおい。 「あおいは、しないね。でも、大きくなったら分かるよ、きっと……って、さくら……顔、真っ赤!」  昨日の感覚を思い出し、怒りと羞恥と、いろんな感情が混ざりあってしまい、その場にいられなくなったさくらはキッチンへと遁走した。 「まま、にげたー」 「ほらね。図星」 「ずぼし?」 「ままは分かりやすいね。さああおい、そろそろ楽しみにしている体操の時間だよ」 「あ、ポテプ!」
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