始まりは不意に

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 今日配布されたばかりの稽古用台本。まだ役柄も未定で、来週までに読み込んでくる様言われてる。 「もしかして台本読んでたの?」 私なんて疲れてすっかり寝ちゃってたのに。 「あぁ」 答えながら振り返る背中が綺麗だって思った。立ち姿が美しいって、こういう感じを言うのかな。 「蓮も…… 役者になりたいの?」  私が持ってないものを、蓮は持っているみたいな気がした。華やかさもそうだけど。もっと…… 別のものを。  デスクに寄り掛かって、片手に捲った台本を持つ。蓮の視線が台本に向く。 『何ひとつ――』 台本を見てる蓮がそれを読み始めた。
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