ある日突然に

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「実はね、合格通知が届いたの」 梨花さんの横に腰掛けて、封筒を見せる。 「わ、この前受けてたやつ。見てもいい?」  頷いて、中身を取り出して梨花に手渡す。彼女は頬にかかる髪を耳にかける仕草をして、それを受け取る。 「すごいけど…… 高いのねぇ」 通知は数枚入っていて、何度か梨花さんが捲り直している。  「決めてるんでしょう?  頑張ってね」 梨花さんから手紙を受け取り、リビングルームの奥へ。扉を開けた先に細めの通路があって、正面の左右にまた扉が二箇所。この左側が私の部屋。  部屋に戻ってもう一度手紙の中身を取り出す。 『劇団ANGEL』合格のご案内――  だけど劇団に入る為の費用が高い。困ったな、って思うけど、やっぱり嬉しい。二十歳もとっくに過ぎちゃったし、最後のチャンスかもしれない。
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