始まりは不意に

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『なにひとつ得られない――』 蓮の透き通った声が聴こえる。 『約束は果たされずに打ちひしがれるのか』 その声に吸い込まれていく。身体を起こして台本を読む蓮の姿に魅入ってしまう。 『真実は知らない。意味がないならほしくない』 あ…… 片手が動く。感情を乗せてるのが伝わる。 『求めたのは―― 』 伏せられた長いまつ毛が儚く揺れる。声が耳に響いてくる。だめだ、蓮から目を離せなくなる。 『ただ貴方ひとりだと――』 すごい…… 何ページも読んでいないはずなのに。    手にしていた台本を静かにデスクの上に置く。蓮を見つめていた私の前にしゃがみ込む。
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