始まりは不意に

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私を見上げた蓮の手が、頬にふれていく。 『此処から連れ出して』 どうしてそんなに刹那い瞳で私を見るの。これは演技? それとも本当の蓮? 『行く道を教えて――』 近付いてくる蓮の瞳。 その声も表情も切なく見えて目が反らせない。  七海―― 蓮の口元がたぶんそう呟いた。見つめ合った瞳を閉じる時間もなく蓮の唇が重なる。  蓮…… 私の声が蓮の唇に奪われていく。合わせられた唇から蓮の吐息が漏れる。  心臓が破裂しそうって、きっとこれを言うんだ。どきどきが止まらないよ、蓮。  蓮の顔が一度離れて、その瞳がふっと和らいで。私にもう一度キスをする。 「無防備過ぎ…… 七海」 ぎゅーっ、って。蓮が私を抱き締めた。
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