始まりは不意に

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 口に出しちゃったらだめな気がして、ちょっと俯いた。私も早く舞台に立ってみたい。  「七海、こっち向けって」 頭の上を蓮の指がポンポン、くしゃくしゃと。 「なにしてるの、さっきから」 払い除けようともがいたんだけど、蓮の手の方が早かった。  振り上げた手首が空中で蓮に掴まって、その力の強さに驚いて、……静止。見つめ合った。 「比べんな」 言葉が早かったのか、唇が重なるのが早かったのか、もうわからない、……硬直。今度は動けない。  蓮の唇がずっと、私の唇に合わさってる。キスしてる。これはほんとのキス……?    振り上げていた手から力が抜ける。掴まれていたはずの蓮の手が私の背中を抱く。  だめ、くらくらしそう。
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