始まりは不意に

18/20
前へ
/66ページ
次へ
 甘い…… 浩斗さんて優しい表情する。空気が柔らかくなるみたい。 「お芝居はどう?」 「来週から稽古が始まるんです」 他愛もない会話が少し交わされて、浩斗さんが不意に黙った。  浩斗さんの腕がスッと伸びて、私の長い髪にふれる。だ、だからそれっ。ドキッとする原因なのに。  ほらやっぱり。見ると浩斗さんの瞳はちょっと笑ってるし。 「本当だ、無防備だな。七海ちゃんは」 「えっ……」 やだ、さっきの蓮との会話、聞かれちゃってた?  扉越しならキスしてたのはまさか見られてないはずだけど……   どんな顔をしたらいいのかわからなくて、戸惑ってしまう。まだ浩斗さんの指が髪に絡んで来る。 「あの……っ?」 なんて言ったらいいのかわからない。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

462人が本棚に入れています
本棚に追加